カメラメーカは画質を犠牲にしている?
各カメラメーカは積層型のセンサーを搭載し、センサーの読み出し速度を高めているようですが、このことにより画質が悪化し、静止画の写真家が疎外感を感じている可能性があるようです。
本日、DPREVIEWによるEOS R5 Mark IIのセンサーテストの結果、ソニー、キヤノン、ニコンの三大カメラメーカが、他の利点のために静止画の画質を犠牲にすることを厭わないどころか、むしろ喜んでいることが明らかになってきている。
(中略)
プレゼンテーションで純粋に画質に関するスライドを見たのは、おそらくα7R Vが最後だという結論が出た。企業は画質について話してはいるが、それは通常、低照度性能に特化しており、色やダイナミックレンジについてはほとんど言及されないか、短時間で終わってしまうことが多い。
代わりに企業はオートフォーカスの速度と精度、そして動画の機能について多くの時間をかけている。2024年には多くの静止画重視の顧客の不満のなかで、カメラメーカはハイブリッド性能に注力している。動画部門やオートフォーカスにおいてカメラを改善するために、彼らは静止画の品質が5年前のカメラほど優れていないハードを選択している。
ソニーはα9 IIIで卓越した画質を約束していなかったが、多くの写真家はそのカメラが純粋な速度のために、どれだけのダイナミックレンジを犠牲にしたのか驚いた。ニコンのNikon Z6IIIでは速度と精度が大幅に向上し、多くの優れた動画機能を搭載したが、新しい部分積層型センサーによって、そのダイナミックレンジは前モデルと比較して著しく低下した。
そしていま、EOS R5 Mark IIの初期のテストでは、再びダイナミックレンジが他の性能向上、特に撮影速度とオートフォーカス性能のために犠牲になっていることが示唆されている。
技術的な観点からは、積層型センサーの性質を考えればこれは理解できる。現時点では速度の向上には何かしらのトレードオフがある。マーケティングの観点から見ると、これらの企業は特定の技術的に頂点に立つカメラ(例えばα9 IIIや独自の設計されたNikon Z6III)を作りたいか、それとも最も多くの人にアピールしたいカメラを作りたいかのどちらかだ。後者のためにはハイブリッドカメラを作るのが最良の方法だ。
ニコンはZ8やZ9で鳥や野生動物の撮影に焦点を当てており、メカシャッターを取り除いた設計に重点を置いているのはそのためだ。Nikon Z6IIIは同じニッチ市場に参入する人に向けてのエントリークラスのカメラのように感じられる。ソニーはしばらくの間、スポーツやアクション撮影に焦点を当てている。
キヤノンはここではワイルドカードだ。同社が発売するレンズやカメラが理想的な顧客が誰であるかを示していない。おそらく同社は誰に対してもカメラを作っていると考えており、それは決して非現実的ではなく、動画向上のためにダイナミックレンジの妥協を行うことにつながっている。これはEOS R5 Mark IIで起きたことだ。
これはキヤノン、ニコン、ソニーが悪い決定をしているといっているわけではない。ただの現実であり、写真のダイナミックレンジにのみ関心がある写真家は無視されていると感じるだろう。
(後略)
性能の向上と画質の悪化
記事では、カメラに新しい機能を追加するために画質の悪化というトレードオフを伴っているのではないかと指摘しています。オートフォーカスや動画性能を向上させたり、連写性能を高めるためにどうしても積層化されたセンサーが必要になりますが、これにより画質が悪化してしまうのだそうです。この理由については、様々な複雑な仕組みをセンサーに組み込んでいるため電気的にノイズが乗りやすいのではないかと言われていたり、積層化するぶんフォトダイオードの面積が目減りしているからノイズが多くなるのではないかと言われています。
そして、これは面白い考え方なのですが、ニコンはNikon Z 9とNikon Z 8で野鳥や野生動物の撮影に焦点を当てていて、これらのカメラはニッチな市場に向けて作られたカメラといいたいようです。そして、Nikon Z 6IIIは、そのニッチな市場に参入しやすくするためのエントリークラス(価格は高いけれども)のように感じるとしています。
キヤノンについてはどのような人に向けて製品を発売しているのかは見えてこないとしていて、すべての人に向けてカメラを発売しているようだとしています。
確かに連写性能を向上させるとセンサーの読み出し速度を向上する必要があって、それにより積層化センサーが必要になり、ダイナミックレンジが悪くなるという流れになるのは間違いありません。そして読み出し速度が向上したので動画の能力も向上させないとねというのも理解できるところです。
一方で動画の性能や高速な読み出しは不必要だから静止画向けの安いカメラや、画質がよいカメラを発売してほしいという人は少なからずいるはずで、そういう人に向けた製品が欲しいというのもわかります。
理想的には積層型でない高画素と、積層型でない高感度にも強い低画素のタイプが欲しいということになるのでしょうか?速度重視の場合にはR5 Mark IIやZ6III、α9 IIIなどに任せればいいのかなと思いますね。
(記事元)PetaPixel
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コメント
コメント一覧 (4件)
「フルサイズにそういった要素を求めるのはおかしい。欲しければ中判カメラ(特にPhaseOneのIQ4)をどうぞ。」
と言われる未来は遠くない…?
(半分)冗談はさておき、センサー技術進歩の方向性がこの記事で言うところの“画質”に向いてないのが現状ですからね。
言いたいことは分からなくもないのですが、そりゃそうだとしか思いません。
いわゆるスマホ画質に慣れきった(それしか知らない)人も増えていますし、これからは「スマホで撮れる・見れる以上の“画質”は過剰なもの」としてよりニッチな要素になるかもしれません。
フォーサーズのセンサーですと、DC-G9M2やDC-GH7に搭載されている裏面照射センサーにダイナミックレンジブーストなる機能を組み込み、ダイナミックレンジを向上するような方向性もありますが、35mmフルフレーム用のセンサーはピクセルサイズに余裕があるので、現状で充分以上の画質であり、デジタルカメラ用のセンサーとしてはこれ以上(静止画の)画質を上げても差がほとんどわからないわけですから、開発の方向性が読み出し速度の方に向かうのは自然な流れだと思います。
ただ、最新のセンサーを使ったカメラが、だいぶ前から発売されているIMX410(24MP)やIMX455(61MP)のバリエーションを使用したカメラと比べて、ノイズレベルやダイナミックレンジでは数字上はわずかであっても下回ってしまうのが我慢ならない人もいるというのは理解できます。
裏面照射は色再現性の劣化、積層型はS/N比の劣化を招くのは事実ですが
ダイミックレンジはゲインで変わるので話が少し混同しているように
見えます。
実際にはメーカーがそれぞれ最適値に調整していると思われるので好みの
問題のように思えます。
キヤノン、ソニー、パナソニックで比較すると彩度、ラチチュードがかなり
異なります。
ダイナミックレンジは無理に広げても写真鑑賞用に表示する機器がない
かもしれません。
プロが使う放送機器等ダイナミックレンジの広い表示装置は画像が眠いです。
※あくまで個人の感想です。
静止画の写真家ってどういう言い回し?
動画の写真家とか静止画の動画家っていないでしょ