デュアルゲインテクノロジー
カメラ関連サイトを巡回していると、特定カメラの設定ISO別のノイズの数を示すグラフなどが公開されているのを見たことがある人も多いと思います。
例えば、こんなグラフです。
これはNikon Z 9のグラフで、X軸が設定したISO値で、Y軸がノイズの多さを表しています。これをみると、ISO400あたりで、急にがくっとノイズレベルが下がっているのがわかります。そういうモノだと言われればそういうものかもしれませんが、なぜこんなに特定のISOからガクッとノイズが減って、そこから直線的にノイズの量が増えていくのだろうと、不思議に感じた人も多かったのではないでしょうか?
そのあたりの疑問を少し解消してみようというのが本記事の目的です。
このようになっている理由は、パナソニックのサイトでは、デュアルネイティブISOテクノロジーとして解説されていて、低ISO時と高ISO時の回路を切り替えて、高感度時でもノイズの少ない画像を可能にしているとしています。
パナソニック製シネマカメラ VARICAMにも搭載されているパナソニック独⾃の先進技術「デュアルネイティブISOテクノロジー」を搭載。⼀般的なイメージセンサーは、単⼀の感度・ゲイン回路構成を有していることから、⾼感度になるほどノイズも同時に増幅されてしまうという課題がありました。BS1Hで搭載しているデュアルネイティブISOテクノロジーは、1画素ごとに「低ISO感度回路※1」と「低ノイズ・高ISO感度回路※2」の2系統の専用回路を搭載し、撮影環境に合わせて使用する回路を切り換えることで、高感度時もノイズを抑えた、より⾃然で美しい絵作りを可能にします。
-パナソニックWebサイト
この⾰新的な技術により、低照度環境下においても美しい描写を⽣み出すことができ、PC編集によるノイズリダクションなど撮影後のワークフロー時間を短縮するなど、映像制作のクオリティをさらにステップアップさせることができます。
この説明のように、特定のISOに達した段階で低ノイズ・高iso回路に切り替わり、高いISO感度でも低ノイズの信号を得られるとしています。恐らくこれと同じような仕組みをNikon Z 9やその他のカメラのセンサーも採用しているのでしょうね。上記で引用したZ 9のISO感度別ノイズレベルのグラフをみると、恐らく回路の切り替わりのISOがISO400で、ISO400以上になったときに回路が切り替わるという仕組みになっているのだと思われます。
どうしてこのようなことが可能なのか
ここまで考えると、ふと最初から低ノイズの回路だけ使えばいいんじゃないのかな?と考えることもできると思います。そのあたりの説明については、今回、DPREVIEWがパナソニックのデュアルゲインシステムについて解説した記事が掲載されていましたので紹介したいと思います。
なぜ、これらの手法を採用するのか
このシステムが何を実現しようとしているかを理解するためには、いったん立ち止まって、なぜデジタルカメラでハードウェアによる増幅を適用するのか考えてみよう。
画素(正確にはフォトダイオード)は光子の衝突による反応として電子を放出する。この過程を光電効果という。一般的なセンサーでは、画素自身は、与えられた光量に応じていつも同じ電圧を生成する。とても低照度の状況では、とても少しの光子が存在していて、だからセンサーから生成される電圧はとても小さい。このため、多くのセンサーは増幅量を増加させようとするが、これには二つの利点がある。
まず一つ目の利点として、センサーから得られる電気信号が、アナログ-デジタルコンバーターがエンコードできる範囲に適合することを意味している。これは、センサーからの出力をより詳細にエンコードすることを意味している。これらは線形になる傾向があるので、最も暗い数段分の光量は、とても少ない数値としてエンコードされる。
二つ目の利点は、センサーが出力する信号は、増幅装置とアナログ-デジタルコンバータにたどり着くまでに加わる電子的に読み出されるノイズよりも、遙かに大きいということを意味していて、最小的な画像におけるノイズの影響を最小限に抑えられるということだ。
これまで多くの”デュアルゲインセンサー”技術を利用したのは、この技術を開発したアプティナと、ライセンスを受けたソニーセミコンダクタだ。これには二つの読み出しモードのある画素デザインを利用している。一つはコンデンサがある回路で、明るく高ダイナミックレンジの状況で、より多くの電子蓄積容量を提供する。読み出し回路からコンデンサーを取り除くと、ダイナミックレンジは狭くなるが、変換ゲインが高くなり低照度下での信号の増幅が可能となる。
-DPREVIEW
これをみると、恐らく低ISOで同じ回路を利用すると、飽和してしまっていわゆる白飛びのような状況になってしまうことが示唆されています。さらに高ISO回路を利用すると、広いダイナミックレンジを得ることができないということのようです。そのため、低照度のとき=光量が少ないときだけ信号を増幅して出力すれば、ダイナミックレンジを許容してよりノイズを少なくすることができるということのようですね。
通常は低照度=ノイズが多いと解釈するので、増幅すると一緒にノイズも増えるのでは?と考えてしまうところですが、この記事を読むと、センサーから増幅装置、アナログ-デジタルコンバータに信号がたどり着くまでに入り込むノイズが多いため、あらかじめセンサーの画素に近い部分で信号を増幅するとノイズを最低限で信号そのものを増幅することができるという仕組みになっているようです。
イメージセンサーではノイズを少なくするために、様々な技術を採用しているのだなということがわかる面白い記事でした。他のセンサー性能を紹介するサイトでも、同じように特定のISOを境目にノイズレベルがガクッと減っているものがありますが、これも同様の技術を利用しているからだと考えられますね。
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