ニコンの新センサーの特許
ニコンが新しい特許を出願した。この特許は、グローバルシャッターとローリングシャッター双方の利点を組み合わせたハイブリッド型イメージセンサーに関するもので、グローバルシャッターの瞬時読み出しと、ローリングシャッターの持つ広いダイナミックレンジや低ノイズ性能を両立させるものだ。
従来のローリングシャッターは上から下へと順番に走査して映像を記録するが、高速に動く被写体を撮影すると「ジェロ効果」と呼ばれる歪みが発生することがある。これに対してグローバルシャッターは、フレーム全体を同時に読み出すため、一瞬で動きを止めることができ、ローリングシャッター特有の「コンニャク現象」を排除できる。ただし、その代償として高感度耐性が低下したり、ダイナミックレンジが狭くなりがちだ。
今回のニコンの特許では、電荷を処理するための二つの異なる経路を持つ画素設計が記述されている。ひとつは効率的に電荷を読み出すローリングシャッター用の経路。もうひとつは電荷をコンデンサに送る経路で、これによりグローバルシャッターとして機能する。
さらに、このデュアル経路設計の副次的なメリットとして、コンデンサが「オーバーフローバケット」としても動作する。これにより、センサーはより広い光量を扱えるようになり、ダイナミックレンジが拡張される。特にハイダイナミックレンジ(HDR)のように強いハイライトと深いシャドウが同時に存在するシーンで有効だ。過剰な電荷をコンデンサに蓄えることで、明るい部分の白飛びを防ぎ、失われがちなディテールを保持できるとされている。
実際にどちらのシャッターモードを使用するかは、撮影者ではなくカメラのファームウェアがシーンに応じて自動的に選択する可能性がある。例えば、風景などディテールを重視する日常撮影ではローリングシャッターを、動きの速い被写体や動画撮影ではグローバルシャッターを、といった具合だ。
ニコンはこれまでもセンサー設計で革新を続けてきた。スポーツ撮影向けのNikon Z9に採用された積層型センサーは、完全なグローバルシャッターではないものの非常に高速な読み出しを実現し、ローリングシャッター歪みをほぼ排除。その結果、メカニカルシャッターを不要にした。また、Nikon Z6IIIに採用された部分積層型センサーでは、コストを抑えつつ積層型センサーの利点の一部を提供している。
ローリングシャッターとグローバルシャッターのハイブリッド
ニコンが、グローバルシャッターとローリングシャッターを切り替えて使用できるハイブリッド型イメージセンサーの特許を出願していると、Digital Camera World が報じています。
特許によれば、一つのセンサーでありながらグローバルシャッターとローリングシャッターの両方式を切り替えて動作可能になるとのことです。グローバルシャッターは全画素を同時に読み出す仕組みで、ローリングシャッターは例えば上から1行ずつ逐次読み出す仕組みです。
グローバルシャッターでは全画素を同時に読み出すため、動く被写体を撮影しても歪みは発生しません。一方、ローリングシャッターは高速とはいえ順番に読み出すためわずかな時間差が生じ、その間に被写体が動くことで“歪み”が写り込んでしまいます。今回の特許は、この二つの方式をシーンに応じて切り替えて利用することを目的としているようです。
たとえば、動きの速い被写体ではグローバルシャッターを用いて歪みのない画像を記録し、風景や低照度での撮影などノイズの少なさや広いダイナミックレンジが求められるシーンではローリングシャッターを使う、といった使い分けが可能になると考えられます。
さらに記事では、グローバルシャッター実現のために設けられたコンデンサにフォトダイオードから溢れた電荷を蓄積することで、より多くの光量を記録でき、それがローリングシャッター使用時のダイナミックレンジ向上につながる可能性があるとも指摘しています。
もし実用化されれば非常に優れたセンサーになる可能性がありますが、センサー自体が高価格になることが予想されるため、製品として搭載した場合のカメラ価格にはやや不安も残ります。
年末に発表が噂されている Nikon Z9 II にこのセンサーが搭載されるとは考えにくいものの、将来的にこの技術を採用したカメラが登場するかもしれないと思うと、とても楽しみですね。
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