α9 IIIのノイズは無視できないレベルだ
グローバルシャッターセンサーを搭載して世の中を驚かせたα9 IIIですが、高感度耐性には問題があるのかもしれません。
α9 IIIの高ISOで撮影したRAWのサンプルを等倍鑑賞してみた。
結果から言うと、グローバルシャッターを持つことにはトレードオフがあることがわかる。
2400万画素、または映画の専門用語で言うところの6kは、解像度と高ISO性能のバランスをとるためのスイートスポットとなっていた。これらのフルサイズカメラは、通常のISO(最大で約12,800)までの範囲では、1200万画素のα7S IIIと張り合うことができるし、6kから4kへのオーバーサンプリングは、ノイズを減らすのにも役立つ。しかし、これはα7S IIIにはできない。
α9 IIIは少し遅れをとっている。
ISO 8,000とISO12,000では、α9とα9 IIのローリングシャッターの2400万画素のセンサーよりもかなり多くのノイズが見られるようになった。
私のサンプルは、Photography Blog Sample Images (RAW / ARW format)のA9 IIとA9 IIIの画像を切り取ったものだ。Adobe Camera RawとAffinity Photoでノイズリダクションをオフにし、未加工のセンサーデータだけを残し、フレームの同じような露出のエリアから切り取るように注意して鑑賞を行った。
低照度性能の損失は約1段、おそらく2段分あると評価しているが、これは無視できないレベルだ。
初期の報告では、ダイナミックレンジも後退しており、これは常用ISO範囲が狭くなっていることも反映している。α9 IIIはベースISOが250で、最高の常用ISOが25,600だ。それでも、10年前のBlackmagic Production Camera 4Kを見ると、このグローバルシャッターのSuper 35mmカメラではクリーンなのはISO 200までで、400が限界だった。800ではノイズレベルだけでなく、センサーの前面にあるグローバルシャッター回路による固定パターンノイズのため使用することはできなかった。このグローバルシャッター回路をセンサーの裏側に移動させることで、α9 IIIのセンサーはもっと熱くなるかもしれないし、少しノイズが多い読み出しになるかもしれないが、少なくとも古いグローバルシャッターカメラのように集光能力が損なわれることはない。
α9 IIIのノイズは、前機種のα9よりも多いかもしれないという記事が公開されています。
記事によれば、α9 IIIはグローバルシャッターを実現した代わりに失ったものがある(トレードオフとの関係にある)としています。それが高ISO耐性やノイズです。
比較したところ、ISO8000とISO12000では、α9とα9 IIよりも多くのノイズが見られるそうです。それも多く見積もって2段分の違いがあるということで、これは無視できるレベルではないとしています。
従来のCMOSセンサーは1画素ずつデータを読み取る必要がありました。とても短い速度で読み出すことができても、2000万画素ともなれば最初と終わりでかなりの時間が経過することになり、被写体が動いていた場合、歪んで撮影されてしまいます。これをローリングシャッター歪みといいます。
一方、グローバルシャッターでは、全画素の同時読み出しが可能です。そのため、全画素を同時に読み出すので、どんなに速く動く被写体でも歪むことなく撮影することが可能です。一方で、グローバルシャッターを実現するには、1画素あたりそれぞれ専用のメモリが必要になり、そのメモリが1画素あたりの面積を目減りさせることになるので、高感度耐性やノイズが悪化するのではないかと言われていました。
今回、ソニーはグローバルシャッターのセンサーを採用した製品を発売したわけですが、世間で言われていたようにグローバルシャッター=高感度耐性が悪化するという状態になってしまっているようです。もちろん、本来だったらもっと悪化するところを、現時点でここまで対処したとも言えるのかもしれませんが、α9よりもノイズが悪化しているということを問題とする人はいるのかもしれません。
このように考えると、α9 IIIは主に画質についてはさほど問題にはならない報道用のカメラとして、グローバルシャッターの利点を活かして撮影できるような被写体に対して利用されていくということになるのかなと思いますね。例えば、ゴルフのスイング、モータースポーツなどがわかりやすい例かもしれません。
またこれ以外には専用メモリを画素の後ろに配置させたことで発熱が問題になるかもしれないことも指摘しています。α9 IIIは120コマ/秒で連写するとバッファのすべてを使い切れないという問題があるようですが、これは発熱に起因している可能性も考えられそうです。この120コマ/秒の連写ではバッファを使い切れない可能性があることについては以下の記事を参考にしてください。
α9 IIIの高感度耐性については、今後、様々なレビューがでてくると思いますので、実際にはどの程度なのか、許容できるレベルのものなのかどうか見ていきたいと思いますね。
さらにグローバルシャッターの実現でメカシャッターが終了するかもしれないことについて「α9 IIIにグローバルシャッターセンサー搭載 メカシャッターは終わりを迎える??」にて詳しくお伝え。
α9 IIIの主な特徴
- 世界初グローバルシャッター方式のフルサイズイメージセンサー搭載デジタル一眼カメラ
- 新次元のスピード性能を生かす最先端のAFシステム
- プロの撮影を支える快適な操作性と高い信頼性
- 即納をサポートする高速ワークフローと高い拡張性
センサーサイズ | 35mmフルサイズ (35.6 x 23.8 mm)、Exmor RS CMOSセンサー |
画素数 | 約2520万画素 |
イメージプロセッサ | BIONZ XR+AIプロセッシングユニット |
被写体認識 | 人、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機 |
手ぶれ補正 | イメージセンサーシフト方式5軸補正 (補正方式はレンズ仕様による) |
手ぶれ補正効果 | 8.0段 |
高速連続撮影 | 約120コマ/秒 AF・AE追従 |
動画撮影 | 4k 120p |
フラッシュ同調速度 | 1/80000 秒 |
シャッター速度 | 静止画撮影時: 1/80000-30 秒、バルブ、動画撮影時: 1/8000-1 秒 |
ISO | 静止画撮影時: ISO 250 – 25600 (拡張: 下限ISO 125、上限ISO 51200) |
フォーカスポイント | 759点(カバー率約95.6%) |
EVF | 0.64型 約943万ドット電子式ビューファインダー |
背面液晶 | 3.2型 約210万ドット 4軸マルチアングル液晶モニター |
メモリカードスロット | CFexpress Type Aデュアルスロット |
サイズ | 約136.1 x 96.9 x 72.8 mm |
重量 | 約703 g(バッテリー、メモリカード含む) |
- ソニー FE 28-70mm F2 GMレビュー “もはやRF28-70mm F2に嫉妬する必要はない”
- ソニー FE 28-70mm F2 GMのサンプル画像が続々と公開
- FE 28-70mm F2 GMは焦点距離全域で開放での撮影ができ非常にボケが美しい
- 中古カメラ市場ではニコン製品が人気!? 中古ランキング席巻の謎
- なぜ人々はα1 IIに失望したのか!? AIに聞いた結果 “価格の割に革新的な変化がない”??
- α1 IIは高解像度とスピードのバランスを改善 AF性能には非常に感心
- ソニー α1 II、α1、α9 IIIの違いは何か!? 主な仕様の比較と相違点
- カメラのキタムラ売れ筋ランキング Nikon Z30が首位 EOS R5 IIが2位で猛追
- ソニー FE 28-70mm F2 GM正式発表 想定価格約50万円 ソニー初全域f/2ズーム
- ソニー α1 IIを正式発表 想定価格99万円 AIチップ搭載によりAF性能が進化
(記事元)https://www.eoshd.com/news/sony-a9-iii-high-iso-raw-test-a-noisier-6k-sensor-than-predecessor/
Twitterいいねとリツイートのお願い
記事をよんで面白いと思ったら、Twitterでのいいねボタン、リツイートをしていただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
コメント
コメント一覧 (5件)
ソニーは世界初のグローバルシャッター搭載ミラーレスカメラ発売の実績を作ることを実用性より優先したように見えますね。
あまりにも割り切っているので、積層の α1II や α7V がこの後に控えているんじゃないか、という気もします。
α9Ⅱと2段差がある=m4/3並みということです。
本命はAI-AFを積んだα1Ⅱでしょう。
サンプル何枚か拝見しましたが、これはちょっと…。ソニーの熱烈なユーザーからはコンシューマー向け機種にGSを搭載したチャレンジ精神を評価する声も大きいようですが、実用を重視する者としては、残念ながらまだまだ自分のフィールドでは使えないと言わざるを得ません。
光源が乏しい場面の多いネイチャーでは厳しく、AIノイズ処理が高性能になっているとはいえ、強めに処理をかければ野生動物の繊細な質感は失われてしまいます。スポーツ撮影向けと言われていますが、室内やナイター競技ではかなり厳しいのでは?報道向けと言っても、最近はネット媒体が主体ですし、ある程度はファイルサイズの大きい写真(高画素)が必要とされるのではないかと思います。
なので現状では秒120コマ、絶対に歪まない、といったメリットがどうしても必要なユーザー向けのニッチなカメラになってしまっているので、これからのGSの進化に期待したいです。が、それはα9Ⅲが売上的に成功しないと望めないわけで、一部プロ、ハイアマ層のセールスで成り立つのかという不安もあります。
歪まない(歪みにくい)という観点だけで見れば、多くの人は現状のローリングシャッター機でも、積層型センサーがさらに普及しミドル~エントリー機へ搭載される未来の方が望まれているような気がします。α9Ⅱの純粋な進化版を期待したユーザーにとっては残念な結果になったかもしれませんね(かく言う私もそうなのですが…)。
今のところ他社にはないソニー唯一の機種ですからね。
これは多彩なセンサーの機種をラインナップしているソニーだからこそ出せたとも思えます。
α1が出たとき50MPの積層型センサーで30コマ/秒連写でき8k動画も撮れてα9シリーズとほぼ同じ筐体 (縦グリ一体型ではない) だったので完全に上位としてα9シリーズを食ってしまいました。
例えばニコンはセンサーや性能がほぼ同じで縦グリ一体か別かのZ 9/8でフラグシップ/準フラグシップが差別化されてますが、ソニーはどうするのだろう (α9シリーズを縦グリ一体型にする?) と疑問だったので、α9 IIIは高感度耐性を犠牲にしてでもスピードに超特化したグローバルシャッターセンサーの機種にしたのは差別化としても十分納得できます (ただα1 IIが50MPのグローバルシャッターセンサーで高感度耐性も改善してくる可能性もありますが) 。
それにISO 6400くらいまでなら問題なく感じるのでα9 IIIはそれほど使いづらいカメラだとも思いませんね。
サンプル画像を見た感じでは超高感度ではノイズが多くRAWに適用される
ノイズリダクションが強すぎて輪郭も失われているように見えますが
通常の明るさなら特に問題は無いように思います。
前例のない初号機なので仕方がないのかもしれません。
次世代で改善されるでしょう。