欧州のある大規模スーパーマーケットチェーンが、2019年の初めに人工知能(AI)を導入した。この企業はAIを使って顧客が毎日さまざまな店舗で購入する製品を予測し、コストのかかる製品廃棄の削減と在庫の維持とを両立させていた。
大量の電力を消費するAIは、どこまで「地球に優しく」なれるのか
売上を予測するためにこの企業は、すでに購入データとシンプルな統計的手法を使用していた。さらに、局地的な天気や交通状況、競合他社の動向といった追加情報に加えて、近年のAIの目覚しい進歩を加速させてきたディープラーニングを新たに導入したことで、エラーの数を75パーセントも削減したのである。
これはまさに、わたしたちがAIに期待するインパクトのあるコスト削減効果だった。しかし、そこには大きな落とし穴があった。新しいアルゴリズムに必要な計算の量があまりに多く、結局この企業はこのアルゴリズムを使わないことにしたのだ。
「言ってみれば、『クラウドコンピューティングのコストが下がるか、アルゴリズムがもっと効率的にならない限りは、大規模に導入する価値はありませんね』といった感じでした」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者で、そうしたケーススタディーを集めているニール・トンプソンは語る。なお、トンプソンはこの企業の名を明らかにしていない。
(記事を一部引用しています)
(記事元)https://news.yahoo.co.jp/articles/b38b58b6c7a9dc89a803c2f762b3714267a4112b
AIに立ちはだかる高い壁
WIREDが現在の人工知能研究に関して報告しています。
記事によれば最近のAIを利用するには、ものすごい計算量が必要になり、その運営コストが大きくなりすぎて導入する価値が低くなっているとしています。
あるスーパーの例として、その日の売上げを予測するために過去の購入データ、天気、交通状況、他社の動向などに加え、AIを導入したさらに売上げ予測の精度を高めるような施策を行ったところ、なんと75%ものエラー(廃棄ロス?)を削減できたとしています。いまも一生懸命頑張っていると思われる廃棄ロスを、さらに75%も減らすことができれば、ものすごいコストの削減になりますし、さらに販売価格を下げることができるので、スーパーにとってはかなりのメリットになるはずですよね。
ですが、開発された新しいアルゴリズムを実行するシステムを維持したり、計算を行うためのサーバーをレンタルするコストが非常にかかるので、コスト削減に対して見合うことがなく、そのAIを利用しないことにしたとしています。
たぶん、計算をしていたのはクラウドで、計算が必要な時間ぶんだけサーバをスケールアウトして性能を拡張して計算させていたはずで、いわば時間貸しのような状況になっていたと思いますが、それでも計算が複雑すぎてお金が掛かりすぎるということになったようですね。
これと同様に、最近は複雑な判別が必要な状況までAIのシステムが進化していて、これを永続的に行うには現在のやり方やアルゴリズムの開発手法、クラウドの使用料金などが高くなりすぎてしまって、このままAIを進歩させるのは金銭的な関係から不可能になるだろうとしています。
こういうようにAIを利用してコストを削減しようと考えている企業は多いと思います。例えば、この場合はスーパーでしたが、同じように、例えば回転寿司、お弁当屋さん、牛丼店、焼き肉屋、居酒屋などのチェーン店は、来客数を予測することができれば、廃棄ロスを減らすことができたり、アルバイトを雇う数を適正にすることができ、かなりの利益になるはずです。
さらにコンビニなどの販売店では、これまでは店長などが経験則に基づいて発注していたものを、過去のデータや気象データなどから正確に判断できれば、ブラック企業とも言われがちなコンビニの運営に関して店長の負担がかなり減る可能性も出てきます。
また企業の経理においては、人事評価に関して個人の主観の入らない成果だけに基づく判断というのも可能になったりして、人事に関する人件費を削減できる可能性も考えられます。
そんな未来はそう遠くない未来に必ずやってくると見られていましたが、スーパーのコストカットのアルゴリズムでさえ計算能力がかなり必要で、そのためのコストに見合わない状況になっているというのは驚きですね。
カメラの被写体認識AFへの限界
カメラに関しても同様の問題が発生する可能性があります。
現在のところ、カメラでは人間や特定の動物の顔、モータースポーツのヘルメット、列車や電車、飛行機などにピントを合わせ続ける被写体認識AFを採用している製品が多くなっています。いま現在は、その数がすくないので対応できていますが、撮影した画像の中に動物がいるのか、人間がいるのか、そしてカメラに近いほうの目は右目か左目かといったことを、画像認識技術で判別して処理しています。
これはすべてのフレームで行われているはずで、この画像認識を行うだけでもイメージプロセッサはかなりの負荷になっているはずです(イメージプロセッサが判別している場合)。最近は、EOS R5やα7S IIIの動画撮影時の発熱問題が取り沙汰されていますが、被写体認識AFも発熱の一つの要因になっている可能性も高いと考えられます。
今後は、人間、犬、猫、鳥、主な乗り物などを認識するAFが主流になっていくと思いますが、それにはさらなる計算量が必要になる可能性があり、それによりイメージプロセッサが発熱したり、バッテリーの消耗が早くなるという可能性も考えられるかもしれません。となると、ハムスターが可愛そうとか、うちのペットの子豚にも対応してほしいということは不可能になるのかもしれません・・・そうなると様々な被写体を認識して追い続けるというようなことは不可能になる可能性がありますね。
ただ、これらの機能をモジュールやデータとして提供し、個別にカメラにインストールしてもらうということで対応することは可能かもしれません。例えば、ネット上で、子豚さん用の被写体認識AFデータを公開し、それをダウンロードしてカメラで利用する(ただし犬、猫、鳥などの認識は不可能)というように個別に被写体を認識できる仕組みにすれば、様々な被写体に対応することも可能そうです。
またiPhoneなどではFaceIDという人間の個々の顔を識別して、ロックを解除する仕組みを導入していますが、それと同じことも可能かもしれません。ある特定の被写体、花とか自分の子供とか、ペットとかを登録して、撮影時にそれを認識して追い続けるという仕組みは可能になるかもしれませんね(一部ではすでに可能なようです)。
というわけで、案外AIありきのイベーションが起こる可能性は将来的には低いのかもしれません。特に車の自動運転などではクラウドありきでは通信状況が悪いときにクラウドを利用してAIによる判断をサポートするということは許されず、自立的なAIにする必要がありますし、今後のかなりの精度で自立運転をするのであれば、かなりの計算量が必要になる可能性があり、完全自立の自動運転という車は非常に難しくなってきているのかな?という印象です。
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コメント
コメント一覧 (1件)
将来どうなるかは誰にもわからない、、、、ということで。ある意味、こういう論も出てきながら地道に進んでいく面もあるのではと思っています。個人的には、インテルが一時期、ネットバーストアーキテクチャで10GHzへ進むといって、すごいなと思っていたのが結構すぐに全く止まってしまい????でした。他の面できちんと進んでいますが、個人的にはCPU関係はもういいか的にはなりましたが。燃料電池も本当に聞かなくなりましたし、超音速旅客機も50年以上立ち止まっていますし、、、、だんだんと横道にそれていきそうです。カメラでは、AFポイントの視線入力もありました。8Kもどうなんでしょうね。
歳を取って、ついていけていない(新しい機能をあまり使えていない)のが一番問題かもしれないのですが。車も自動ブレーキ等はもう当たり前的になっていますが、プロパイロット等の運転支援にはまだ興味がわかない。まだ瞳AFも未経験です(対応カメラを買っていないし、動物関係もあまり撮影しないし)。。。。。