ニコンが一眼レフから撤退しない理由
ニコンが一眼レフからは撤退しない理由という記事が掲載されています。一体どのような理由で一眼レフから撤退しないというのでしょうか?
それでは記事をみてみます。
製品として成熟し、縮小傾向にある一眼レフの開発可能性を残す理由についても、徳成氏は丁寧に説明した。同氏は2年前に三菱UFJフィナンシャル・グループからニコンに転じた。その際に一番驚いたのは基礎研究に始まり、製品が顧客に届くまで、数十年かかることもあるというリードタイムの長さだったという。「長いリードタイムの中で培った技術資産を一旦失うと、いざ類似の商品を求められたときに商品を供給できなくなる」(徳成氏)と危惧する。
日経XTECH
記事はニコンのCFOへのインタビューを記事にしたものになっていて、いわば半ばニコンの公式発言という位置づけになります。上記は一眼レフから撤退しない理由について引用していますが、その他にも興味深い発言がありますので、全文は記事元リンクからご覧ください。
記事によれば、一眼レフから撤退しない理由として”いちど技術者や技術の資産を失うともう製品開発はできなくなってしまう。そのため一眼レフの技術資産を捨てることはない”という内容を述べています。
これまで”一眼レフの開発は一時停止しているだけで中止したわけではない”という情報が伝わっていました。しかし、これは言葉遊びの返答で実際には事実上の開発停止ではないかという声も多く聞かれます。
そのため「開発の撤退」の定義とはどのように定義されたものなのかが気になるところですが、このインタビュー記事によれば、ニコンは以下の状況になったら「開発の撤退」であるとしています。
・合併、買収なので一眼レフ技術者や技術を他社に売却する場合
日経XTECH
・バランスシートから一眼レフ関連の資産を除去する場合
・特許権を失効させる場合
ニコンは、上記の状況になったら一眼レフから撤退したと考えていいとしています。つまり一眼レフの開発ができる技術者や、開発するための技術、一眼レフに関する資産がある限りは、「開発の撤退」ではないということになります。
このことから考えると「開発から撤退した」と判断するのはかなり難しい条件となっているなと感じてしまいます。ニコンは少しでも利益を得られるのであれば一眼レフの生産を続けると思いますので、一眼レフの資産を手放したり特許を失効させたりしないと思いますので、この条件からは事実上、開発の撤退となる条件を満たすことはあり得ないということになってしまうと思うのは私だけでしょうか(ニコンがカメラ事業を他社に売却する可能性はあると思いますが)?
技術の継承という側面
しかし、技術の継承という側面でのこれらの発言は非常に理解ができます。いちど生産できなくなってしまうと、またゼロから開発し直しということになってしまいますので、一眼レフ生産の技術やノウハウ、生産設備などはできるだけ残していきたいと思うはずです。
実際に一度は廃れたインスタントカメラの富士フイルムのチェキが、近年復活してきているように、また一眼レフ人気が復活する可能性もないわけではありません。またミラーレスでは不可能で一眼レフでしかできないことということも、いま様々な技術の発展のなかでは今後でてくるかもしれません。そのためにはいつでも製造できるように技術を残しておくということには意味があるのではないかと思いますね。
また当サイトに寄せられたコメントで以下のようなコメントがありました(コメントありがとうございます)。
Nikon1 V2
2022年7月29日 05:46ニコンは以前、技能伝承のためにレンジファインダー機を限定販売しました。
https://mirrorless-camera.info/market/18829.html
ニコンFを期間限定でメンテナンスを受け付けるのもその一巻と思われます。
デジタル一眼もミラーレスと比較すれば製作に高い技術が要求されます。
ずいぶん前に修理業者と思われる人のデジタル一眼とミラーレスの分解比較記事を
見たことがありミラーレスはデジタル一眼と比較し部品数が少なくネジの
総数が1/2だったか1/3だったか忘れましたがその程度しかないと言うこと
でした。
そのような経緯も考えれば技能伝承のためにいずれ一時的に復活しない事も
ないかなと思います。
機種はD6でしょうね。
いずれにしてもしばらく先ではないかと思います。
精密光学機器は図面や回路図があっても作れませんから。
セイコーが今でも機械式のグランドセイコーを作り続けているのも同じです。
このコメントは非常に説得力がある内容です。技術の継承という意味で、ニコンはレンジファインダーを限定販売したり、そして将来的に何らかの一眼レフの限定販売があるかもしれないと考えると、ニコンが一眼レフから撤退するということは確かにないのかもしれません。
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コメント
コメント一覧 (2件)
>精密光学機器は図面や回路図があっても作れませんから。セイコーが今でも機械式のグランドセイコーを作り続けているのも同じです。
レンズは別として、ミラーレスのように電子機器になれば、日本の強みのアナログ技術が発揮できず、近い将来日本のカメラメーカーの撤退が増えていくでしょう。また撮影の楽しさは、光学ファインダーのカメラが優位性が高いと私は思います。
ニコンにいずれ出してほしいカメラは、Dfのスリム版。ミラーレスで得た技術をレフ機にフィールドバックする。当然高額機種になると思いますが、それでいい。nikonブランドの価値をもっとアップしてほしいです。
「技術維持・継承のための開発」も開発に含まれる話ですし、もちろん続けてほしいです。
ただ、新製品や新機能を当分開発する予定がないのなら、一般目線では事実上の開発撤退(停止でしょうか)と感じるのではないかと思います。近々の予定がない以上縮小とはいえず、一時停止というには再開目処が立たずですから。
記事にある半導体露光装置のように何十年後に再興する可能性はあるでしょう。生産物自体が違うので、同じデジタル画像を生み出すカメラとの単純比較はできませんが。