スパコンで1万年かかる計算を3分20秒で? 量子コンピューター
大手IT企業「グーグル」の研究者などのチームは、次世代のコンピューターとして注目される量子コンピューターが、従来のコンピューターをはるかに上回る性能を持つことを実証したとする論文を発表し、複雑な計算が必要とされる医薬品の合成や、経済・金融分野への応用など、実用化に向けた期待が高まっています。アメリカの大手IT企業「グーグル」などの研究チームは、23日付けのイギリスの科学雑誌、「ネイチャー」に、量子コンピューターについての論文を掲載しました。
それによりますと、実験用に開発したプロセッサーを使って、乱数を生成する問題を計算させたところ、従来のコンピューターではおよそ1万年かかるという結果が出ましたが、量子コンピューターは3分20秒で計算を終わらせたということです。
しかし、実際に計算を行える量子コンピューターを開発するには技術的に解決しなくてはならない問題が数多くあり、従来のコンピューターにはできない計算が本当にできるのかは証明されていませんでした。
一方で、今回の発表に関してはIBMなど一部の研究者から、検証の方法に疑義があがっているほか、計算で起きるエラーの訂正の手法や、新たな記録媒体の開発など、解決しなくてはならない課題が多くあり、従来のコンピューターのように一般に普及するまでには、まだ時間がかかる見通しです。
(記事を一部引用しています)
量子コンピューター実現でネット社会が終了する恐れ?
googleが自社で開発した量子コンピューターで、今あるスーパーコンピュータで1万年かかる計算を、たった3分20秒で実行してしまったということが話題になっています。この結果、ビットコインの価値が急落するなどの社会的な問題にまでなっているようです。
なぜそのような問題になっているのかというと、今、我々が普通に利用している暗号化に関する問題が発生するかもしれないからと言われています。具体的にはどういうことなのでしょうか?
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ネットで利用されている公開鍵暗号
ネットの世界では公開鍵暗号という暗号方式が多用されています。例えばブラウザで安心して情報を送受信するためのSSL(https)ですとか、WiFIの無線LANのデータのやりとりにも公開鍵暗号が利用されています。そしてビットコインでも公開鍵暗号は利用されていて、本人であることを証明する、いわゆる銀行の口座番号に当たるような仕組みを公開鍵暗号を利用して実現しています。
この公開鍵暗号というのは非常に難しいのですが、かいつまんで簡単に説明すると、あるデータを秘密鍵で暗号化し、そして公開鍵で復号するというようなことをしています。
わかりやすく説明するために、例えば、ブラウザでWebサイトを閲覧することを想定します。Webサイト側ではWebサイト側が持つ秘密鍵でデータを暗号化します。そしてブラウザ側には公開鍵を渡しておきます。Webサイトは秘密鍵を利用して暗号化した情報をブラウザに送信し、ブラウザは公開鍵で暗号化データを復号し、そしてブラウザ上に表示させるわけです。こうするとデータを暗号化して送受信できるので他人に漏れることがありません。これがSSLの仕組みです(簡略化した説明で実際には異なります)。
さらに秘密鍵はWebサイト側が秘密にしていて公開されていないので、そのWebサイトが暗号化したデータは、Webサイトが公開した公開鍵でしか復号することができません。ですので、そのデータはそのWebサイトが送信したデータに間違いないという証明にも使えます。いわゆる本人確認的に使えるわけですね。ビットコインでは本人確認には、このような仕組みの一部を利用しています。
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コンピュータの計算能力向上で破られる可能性
それでは、量子コンピューターで計算が速くなると、なぜ公開鍵暗号に問題が発生する可能性があるのでしょうか?それは公開鍵暗号は”一方向関数”というものが関わっているからです。
これも説明が難しいので簡単に説明しますが、一般的に素数と素数を乗じたものの数を、素の素数と素数に戻すことは難しいというような性質を利用しています。
例を挙げてみます。例えば、221を二つの素数に分けるように素因数分解してみてください。たぶん、多くの人は小さい素数が順番に計算していきますよね?2、3、5、7、11・・というように計算していくと、これが17×13=221ということがわかると思います。
これは桁数が少ないので簡単ですが、何十桁という素数と素数を掛け合わせたものですと、その数値を素因数分解することはとても時間がかかり面倒くさいことになります。ですが、17と13という数値を知っていれば221という数値は簡単に作ることができます。このように片方は難しく、片方は簡単にできるという仕組みを利用して公開鍵暗号を実現しています。この場合の公開鍵は221で秘密鍵は17と13ということになります(簡略化した説明で実際には異なります)。
これまでは221を17と13に分解するようなことはスーパーコンピュータでも何十年という時間が必要だったため解読されるリスクはかなり低いと考えられていました。ですが、今回、googleが開発した量子コンピューターで計算するとひょっとしたら3分強で解読されてしまう可能性がでてきたわけです。そのため、今利用している暗号化技術を利用したSSL、ビットコイン、WiFiまでもが簡単に解読されてしまう可能性がでてきた問題になっているということですね。
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実現はまだまだ先?
記事にもあるように、まだ実現にはかなり先という話もありますし、基本技術の一つが証明されたに過ぎないという意見もあるようです。また、公開鍵暗号方式の要である素因数分解が量子コンピューターのよって素早くできてしまうかどうかということもわからないようなので、今のところは安全なようです。
ですが、すべての計算が素早くできる量子コンピューターが開発されてしまったら、ネット社会では本当に混乱になる可能性が高いと考えられそうですので心配ではありますね。
詳細は本記事下部の記事元リンクからどうぞ。
(記事元)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191024/k10012146191000.html
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