――EOSで初めて搭載したボディ内手ブレ補正機構の飛び抜けた性能に驚いています。
木村さん:ボディ内手ブレ補正機構(IBIS)は、ようやくという感じもありますが、いろんな事情があってこのタイミングでの搭載になりました。いろいろな撮影条件で効果が体感できるレベルになったと感じており、手持ちで撮ってもらえる機会が増えるといいなと思っています。参考までに、カタログなどに掲載している写真で滝を手持ちで撮影したものがありますが、シャッター速度は2秒前後だったと思います。滝のような水の流れるシーンの表現はシャッター速度に大きく左右されますが、そのような撮影でもとても有効です。
今回、世界最高の8段分補正をうたうことができましたが、そこに向けて詰めていく際にはいろいろな苦労がありました。デバイスや機構が完成しても、細かな調整で精度を上げないと目標とした性能に届かないからです。なかでも苦労したのが回転ブレの補正で、それ以外の補正性能をしっかり仕上げてからでないと調整がなかなかうまくいきませんでした。
――ボディ内ISとレンズ内ISを協調して制御する「協調IS」について、少し詳しく教えてください。
木村さん:協調ISは、RFマウントの通信性能を最大限活用した機能です。ここでいう“協調”とは、レンズ内ISとボディ内ISで同じ補正量を分担しているシステムのことをそう呼んでいます。メリットとしては、突然カメラが大きく揺れたときなどにそれぞれがうまく動いて補正できることと、それぞれの情報をうまく持ち寄って高精度の処理が可能になることがあります。
誤解されやすいのですが、協調ISに対応しないレンズだとボディ内ISの恩恵はまったく受けられない、といったことはありません。「RF600mm F11 IS STM」「RF800mm F11 IS STM」など、協調ISに対応しないレンズを装着した場合でも、ボディ内ISで光軸ブレやシフトブレの補正を行っています。
(記事を一部引用しています)
(記事元)https://news.yahoo.co.jp/articles/f6c01a7238f90e4100ade1ed4222049d25604ef3
EOS R5/R6開発者インタビュー
マイナビニュースがEOS R5/R6の開発担当者へのインタビュー記事を掲載しています。記事は長文で、他にも面白い内容がありますので、全文は記事元リンクからご覧ください。
記事では、様々なことに触れられています。ローパスフィルターの有無や、絵作りの違い、新しいバッテリーなどについて記述があるのですが、面白かったのが手振れ補正に関する記事でしたので紹介します。
キヤノンが始めて発売したフルサイズミラーレスのEOS RとEOS RPにはボディ内手振れ補正が搭載されなかったことについて、非常に残念だと感じていた人が多かったですよね。それに先かげて発表されていたNikon Z 6/Z 7にはボディ内手振れ補正がありましたし、すでにソニー製品にも搭載されていた技術だったからです。
ですが、記事をみると、よりよい手振れ補正機能を実装しようということで、様々に試行錯誤をしていたため、どうしてもEOS R5/R6へ搭載するというタイミングになったということがわかります。恐らくですが、Nikon Z 6/Z 7の発売にあわせて対抗する形でEOS Rを緊急的に発売する必要があったため、そのときには間に合わなかったのではないのかな?と想像しています。少なくともEOS Rの時点では発売できるだけのものは完成しておらず、そこから1年以上もの研究開発期間が必要だったのだろうと思いますね。
そして2年後にEOS R5/R6が発表されるわけですが、いよいよ本格的な手振れ補正がEOS R5/R6に搭載され、世界最高の8段分の補正も可能ということで、シャッター速度2秒の手持ち撮影も可能になったようですね。2秒も手振れがないというのは、かなり強力な補正機能だということが言えそうです。
各社の手振れ補正の対応状況
よく、5軸ボディ手振れ補正という言葉がありますが、この5軸というのは、どのような軸なのでしょうか?
(引用)https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7M2/feature_1.html
上記の画像はソニーのサイトからの画像の引用です(画像クリックで拡大します)。
まずはピッチとヨーです。画像でいう1と2になります。これは角度ブレといって、カメラをもったままレンズを上に傾けたり、下に傾けたりしてしまうブレを補正します(ピッチ)。同様に、右に傾けたり、右に傾けたりするブレも補正します(ヨー)。
次はカメラそのものを上下左右に動かしてしまうようなことを補正します。これをシフトプレといいます。このシフトブレにも画像でいう3のX軸方向と4のY軸方向があり、それぞれを補正してくれます。さらに、レリーズボタンを押すとカメラの右側が押し下がるような動きになり、それがブレになる可能性があります。それを回転ブレといい時計まわり方向の補正と、反時計回りの補正があります。
このように、1)縦の角度ブレ、2)横の角度ブレ、3)横のシフトブレ、4)縦のシフトブレ、5)回転ブレの5種類の補正してくれるので5軸手振れ補正と言われているわけですね。
5軸手振れ補正の内訳
上記画像の1)縦の角度ブレ
上記画像の2)横の角度ブレ
上記画像の3)横のシフトブレ
上記画像の4)縦のシフトブレ
上記画像の5)回転ブレ
このうち、キヤノンではレンズ側とボディ側で手振れ補正が強調して動作するということになっていますが、具体的にはどのように協調動作するのでしょうか?
まず既存のレンズ内手振れ補正ですが、基本的には1)と2)の角度ブレしか補正できません。一部の特殊レンズには3)と4)のシフトブレにも対応したレンズが発売されている感じです。
そのため、ニコンとソニー手振れ補正は以下のように対応になっています。
・手振れ補正非搭載レンズ 角度ブレ、シフトブレ、回転ブレ、すべてをボディ側で補正
・手振れ補正搭載レンズ 角度ブレはレンズ側で補正、シフトブレ、回転ブレをボディ側で補正
では、協調式補正と述べているキヤノンのボディ内手振れ補正はどのように違うのでしょうか?具体的には以下のようになるようです。
・手振れ補正非搭載レンズ 角度ブレ、シフトブレ、回転ブレ、すべてをボディ側で補正
・手振れ補正レンズ 角度ブレをレンズ側とボディ側で協調補正、シフトブレと買い分ブレはボディ側で補正
・ハイブリッドISレンズ 度ブレをレンズ側とボディ側で協調補正、シフトブレをレンズ側で補正、回転ブレをボディ側で補正
このように、角度ブレに関して、レンズとボディでそれぞれ協調して手振れ補正をすることで、より強力な補正が可能になっているということがわかりますね。
記事では、このような協調型の手振れ補正が可能になったのは、レンズと本体との高速通信が可能だからだとしています。レンズ側で得た手振れ補正に関する情報をボディ側で得て、ボディ側の手振れ補正に関する情報とあわせて計算し、最適な手振れ補正量をレンズと本体でそれぞれ割り振るというようなことをしているので、そのような高速なデータ通信が必要だったと思われます。
このようなマウント設計にしたというのは、さすがキヤノンで先見の明があるという感じがします。逆に、ニコン、ソニーは同様なことを可能にするマウント仕様になっているのでしょうか?そのあたりは逆に気になるところですね。
[template id=”4241″]
コメント