ARRIが二つの製造拠点を閉鎖へ
ARRIは現在、財政的な困難とプロ向け映画業界の厳しい状況に直面しており、今週、照明機器の製造を主に担っていた2拠点を閉鎖し、従業員の削減を行うと発表した。
ブルームバーグによると、ARRIグループのこの決定は、映画業界全体の縮小と制作本数の減少が背景にある。同じ理由で、ARRIは今年初めから売却の可能性を検討していた。
8月に売却の噂が報じられた際、ARRIがコンサルティング会社アリックスパートナーズと協力して「事業の合理化」を進めていることも明らかになった。今回のステファンスキルヒェンとブランネンブルクにある照明工場・修理・流通拠点の閉鎖は、こうした流れの延長線上にある。
ブルームバーグの報道によれば、これらの照明関連施設は年末までに閉鎖され、150人が現在の職を失うことになる。ただし、ARRIはそのうち約3分の1にあたる従業員に対し、ミュンヘン本社でのポジションを提示する予定だという。
ARRIの広報担当ケヴィン・シュヴトケはブルームバーグへのメールで、「映画業界の多くの企業と同様に、ARRIも市場の需要変化に対応しつつ、コアの強みを強化するための大きな変革を進めている」と述べている。
1917年創業のARRIは、長年にわたり映画業界の中心的存在だった。しかし近年では、中国企業を中心とした安価な代替品の台頭により、同社の照明機器は以前ほどの存在感を失っている。
映像業界全体でも、映画照明に限らず、プロ向けの高価な機材が、手頃な価格のプロシューマー向け製品に置き換えられる傾向が強まっている。
撮影監督ザカリー・サンドバーグはRedditで「“ハイエンド”はもはや成立しない。ほとんどすべての機材に、95%の性能を持つ安価な代替品が存在する」と語っている。
ハイエンドは成立しない状況に
ARRIが証明を製造する2つの施設を閉鎖する予定だとPetaPixelが伝えています。上記は一部を引用したものになります。
記事によれば、ARRIは財政的に困難な状況を迎えており、照明を製造する関連施設を閉鎖することになったとしています。
ARRIは、1917年にドイツ・ミュンヘンで創業された、映画・映像機器の分野で世界的に高い評価を受けている企業です。創業者であるアウグスト・アーノルド氏とロベルト・リヒター氏の名前の頭文字を組み合わせて「ARRI」という社名が誕生したそうです。
ARRIは、映画用カメラ、照明機器、レンズ、ステビライザーなど、映像制作に必要な幅広い機材を開発・製造しています。中でも、デジタルシネマカメラ「ALEXA」シリーズは、ハリウッドをはじめとする世界中の映画制作現場で使用されており、アカデミー賞受賞作品にも多数採用されています。
例えば、第97回のアカデミー賞ノミネート作品で使用されたカメラは以下の通りとなっています。
- 第97回アカデミー賞(2025)作品賞ノミネートと使用カメラ
- Anora — 主に35mmフィルム(ARRICAM / ARRI 系のフィルムカメラ)(35mmアナモルフィック撮影)
- The Brutalist — 主に35mm / VistaVision(Kodakフィルムを使用。ARRI/Arricam 系カメラ等のフィルム機材)
- A Complete Unknown — 主に Sony VENICE(VENICE 2 を含むソニー製デジタルシネマカメラ)
- Conclave — 主にRED(RED V-RAPTOR 系のデジタルシネマカメラ)
- Dune: Part Two — 大判デジタル/IMAX向け撮影でARRI(ALEXA LF / ALEXA 65 / Mini LF 等)(IMAX対応の大型フォーマット運用あり)
- Emilia Pérez — 主にSony VENICE系(VENICE / VENICE 2 / VENICE Extension System など)
- I’m Still Here — 主に35mmフィルム(Aaton などのフィルムカメラ運用+Super8併用)
- Nickel Boys — 主にSony VENICE / VENICE 2(ソニー製デジタルシネマカメラ) をベースに、Panavisionのレンズ/光学系を組み合わせた運用
- The Substance — 主にARRI(ALEXA LF/ARRI ALEXA 系)(スタジオ中心の撮影でARRIデジタルシネマ機材を採用)
- Wicked — 主にARRI(ALEXA 65 / ALEXA LF 系の大型センサー機)(Panavisionと協働したレンズを併用)
10作品のうち5作品で何らかの形でARRIのカメラや製品が使用されており、それだけ存在感のあるメーカーとなっています。
しかし記事によれば、映画業界全体が縮小したり、撮影本数が減少しているようで、これだけの存在感があるARRIですら経営が困難な状況になっていまっているようです。
記事では、どのような映像制作関連のツールにおいても廉価な選択肢が登場しているため、ハイエンド製品のみで利益を得るのは難しい状況と述べられています。ソニー、キヤノン、ニコンなどが廉価なシネマカメラを投入していることを見ても、これらの製品で撮影すれば低予算で撮影することが可能になるということのようです。
ARRIがこの状況ですから、ハイエンドの映画用カメラ市場はかなり厳しい状況になっていると考えられそうですね。




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