スマートキーの問題点を利用した車の窃盗が明らかになっています。この問題はかなり重要で、普通に車を利用しているだけで、自分の車が盗まれてしまうかもしれないという危険性があります。スマートキーシステムを利用している人はすべて、この問題を抱えており、いつ車が盗まれてしまうかもしれないという重要な問題となっています。
当ブログの主題であるカメラとは関係ありませんが、社会的な問題となりそうですので、ここでスマートキーの脆弱性を利用した自動車の盗難について、被害に合う人を一人でも少なくするために、この話題について取り上げてみたいと思います。
■スマートキーシステムとは?
スマートキーシステムとは、電波を利用した車の施錠システムの一つで、スマートキーというキーを認識して車の施錠や、エンジンの始動などを行います。
具体的には電波を発するスマートキーが車の近くにあると認識することで、例えばドアに触れると車の施錠を解除したり、スマートキーを所有する人が車内にいることを認識すると、車本体のエンジンスタートボタンを押すことでエンジンが始動したりします。
この仕組みは、ドライバーが所有するスマートキーと車が、電波を通じてデータをやりとりし、そのスマートキーが本当にその車と対応するキーであるかどうかを認識することで実現しています。本物であると確かめられるとドアを解錠したり、エンジンをスタートしたりします。
このあたりの仕組みは、難しく考えるとわけがわからないですが、スマホと自宅のWi-Fiネットの関係と考えるとわかりやすいかもしれません。個人の自宅のWiFiは接続できる範囲が限られますが、スマホがその範囲に入ると自動的に登録したパスワードを利用してWi-Fiのネットワークに接続して通信ができるようになります。Wi-Fiルータとスマホの関係が、自動車とスマートキーの関係にあると考えるとわかりやすいと思います。
■スマートキーシステムの接続範囲は?
通常のスマートキーが車と通信できる範囲は70cm~150cmぐらいと言われています。それ以上の範囲ですと電波が届かず、車とスマートキーは通信をすることができません。
それを図示すると上記のようになります。画像クリックで拡大します。長方形の図形が車で、楕円形の図形がその車が電波を受信できる範囲とします。右上の赤い四角形がスマートキー(リモコン)です。この図形のように、リモコンが、リモコンの反応する範囲外にある場合には電波が届かないので、車のドアを開けることができません。
リモコンを車に近づけたとします。そうすると上記のようにリモコンが反応する範囲にリモコンがあるので、車のドアを開けることが可能になります。画像クリックで拡大します。
通常であれば、最初の画像のようにリモコンは、車が反応する範囲外にあるため車のドアを開けたり、エンジンをスタートすることができません。
■スマートキーシステムの盲点
ですが、ここに盲点がありました。これを考えた人はすごいと思います。
もし、遠くにあるリモコンの電波を何らかの手法で延長することができたらどうでしょうか?スマートキーのシステムは、だいたい70~150cmの距離しか届かないと言われています。なので車から70cmぐらいの場所にスマートキーを持ち込まないと車の操作はできないのですが、もしこの距離を伸ばすことができたら、何百メートルも離れた場所から車の操作ができることになってしまいます。
これは、このような技術によって実現しています。
言葉で説明すると難しいので、上記の画像を参照してみてください。画像クリックで拡大します。
本来のリモコンは、車のリモコンが反応する範囲外に有るので、そのままでは車の操作をすることができません。そこで活躍するのが、リモコンからの電波を受信し、他の送受信機に送信するシステムです。具体的にはリモコンの電波を送受信機Aが受信し、その内容を送受信機Bに送信します。送受信機Bは送受信機Aから受信した「リモコン」のデータを車に送信します。そうすると、車はリモコンからのデータを受信したと判断して、車のドアを開けることを許可したり、エンジンをスタートすることを許可してしまいます。
こんなことってあっていいの?とは思いませんか?ただ普通に車を利用しているだけなのに、スマートキーからの電波を勝手に利用されて、自分の車に送信され、車が盗まれてしまうという。このような方法はスマートキーからの電波を車にリレーしていくので「リレーアタック」と呼ばれています。
このように車とリモコン(スマートキー)の距離が十分に離れていたとしても、上記のような方法で電波をリレーされることで車のドアを開けられたり、勝手にエンジンをスタートされてしまうことはあり得ることですので注意が必要です。
■リレーアタックで車が盗難される頻出パターン
では、具体的にどような状況で、車が盗まれるパターンが考えられるでしょうか?
一番多いと思われるのが玄関先にスマートキーを保管しているパターンです。特にですが、お年寄りは鍵をなくしたり、どこにおいてあるかわからなくなったりするのが嫌で、玄関先や下駄箱の上などに自宅の鍵や車の鍵を保管している人が多いです。
スマートキーの電波が届く範囲は70~150cmと言われているので、玄関から1メートルぐらいの場所にスマートキーを保管していると、盗難用の送受信機を利用し、スマートキーの電波をリレーされてしまい車が盗難されてしまう可能性があります。
では、車から遠い場所、例えば玄関からかなり遠く離れた場所にスマートキーを置いておけばいいのか?というと、それは確かに多少は安全性が高まりますが、必ずしも確実に安全とは言えません。
なぜなら、電波の到達距離は相手側(盗難する側の送受信機)の性能によって異なるからです。もし、指向性の強いアンテナを利用した場合、スマートキーの電波の届く範囲は150cm以上になる可能性は十分にあります。そうすると、より遠くから電波を受信できることになりますので、距離が離れていれば大丈夫ということにはならない可能性があります。
さらに、これが自宅ではなくコンビニで買い物をしている状況を考えたらどうでしょうか?あなたは車をコンビニの駐車場に止めます。そして、スマートキーを持ってコンビニ店内に入ります。あなたの車を盗難しようとする人は、送受信機をもってあなたの近くまで行きます。そうすると、あなたはスマートキーを持っていますので、盗難しようとする人はその電波を受信することができます。そして、もう一人の犯人があなたの車の近くで、もう一人の犯人が送信する電波を受信することができれば、簡単にあなたの車のドアを開けることができ、エンジンをスタートすることができます。これで、盗難は完了します。
■車が盗難されるパターン
パターンA 自宅の玄関先、自宅の庭に近い部屋でキーを保管している
すでに述べたように、指向性の強いアンテナを利用すれば部屋の奥に保管しているスマートキーとも通信ができてしまう可能性があります。スマートキー単体では70~150cmぐらいしか通信できないとしても、指向性の強いアンテナを利用することで数メートルぐらいは通信できてしまう可能性があるので注意が必要です。
盗難しようとする人は大きなアンテナを手に取り、スマートキーからの電波を受信しようとします。自宅の駐車場、庭、裏庭、勝手口などに回り込んでスマートキーの電波を受信しようとします。なので駐車場、庭、裏庭、勝手口、窓に近いところにスマートキーを置いておくと車が盗難されてしまう可能性があります。
パターンB スマートキーを持ったまま狭い場所に居続ける
これまでは自宅に車を駐車していた場合を想定していましたが、買い物や食事などでお店の駐車場に駐車していた場合でも車が盗難される可能性があります。
例えばラーメン屋に車で出かけ、ラーメン屋の駐車場に駐車し、狭いラーメン屋で飲食する場合を想定します。車の所有者はスマートキーで車に鍵を掛け、そしてラーメン屋で飲食をするわけですが、狭いラーメン屋ですので、簡単にスマートキー所有者を割り出すことができます。割り出すといっても本人を特定する必要はなく、盗難しようとする人が車の所有者の近くに寄ることができればスマートキーと通信することができます。友達をさがすフリをしてラーメン屋の店内を一周している間に、スマートキーの近くを通ることができれば、それだけで車を盗難できることになります。
コンビニでも同様です。コンビニに駐車し、買い物をしている車の所有者の横をすれ違うことができれば、車を盗難することができます。
■どうすれば車の盗難を防げるのか
すでに対策されているという誤報
一部の新聞で、このリレーアタックについて対策されている車種があるとしていますが、これは完全に誤報で、最新型の高級車でもリレーアタックにより盗難未遂にあっています。
この対策済みというのは、スマートキーで特殊な操作をするだけでスマートキーから電波の送信を停止することができるというだけのもので、リレーアタックに対抗する仕組みを取り入れたというわけではありません。なので、リレーアタックに対応済みという車種だからといって安心せず、いかに記述するような防御方法を実施する必要があります。
盗難防止の方法1 自宅では空き缶などで保管しておく
まずできることは、自宅では空き缶などで保管しておくことです。100円ショップでスチール缶のケースなどが販売されていますが、これに入れて蓋をしておくと、電波は金属を通り抜けることができないので、スマートキーは外部と通信できなくなります。なので、自宅での保管では、まずはこれが安心です。
ただし、この方法では上記に記述したような外出先での盗難を防ぐことができません。コンビニ、ファミレス、書店などで購入しているときに盗難されてしまう可能性があります。ただ、出先で盗難に遭うというのは可能性としては低いでしょうから、自宅での盗難を防止することは一定の意味があると言えます。完全な盗難防止にはなりませんが、外出先の盗難リスクを許容するのなら有力な防止方法になり得ます。
盗難防止の方法2 そのつど電波の送信を停止する
これはスマートキーのキーを操作することで電波の送信を停止する方法です。車から降車して施錠するたびにスマートキーを操作して、スマートキーからの電波の送信を停止させれば、自宅にいても外出先でもスマートキーは電波を送信しないので、車を盗難されることがなくなります。
これは完璧な方法ですが、スマートキーというシステムの利便性を完全に殺していますね。面倒ですが、盗難されるよりマシということでしょう。
盗難防止の方法3 電波を遮断するキーケースに入れておく
これは「盗難防止の方法2」とほぼ同じです。「盗難防止の方法2」がスマートキーの機能を利用して電波の送信を停止させるのに対し、この方法では電波を遮断するキーケースに入れて電波を遮断する方法です。これだとスマートキーを特殊な操作をする必要がないので、簡単に電波を遮断することができます。
ただ、これも同様にスマートキーというシステムが使えなくなりますし、使う場合にはいちいちキーケースから取り出すという作業が必要になるので、それが面倒です。
盗難防止の方法4 スマートキーのシステムを停止する
これは究極の対策法ですが、スマートキーのシステムを停止してしまうという方法です。これは一部の車で可能ですが、スマートキーのシステムを止めてしまい、完全にワイヤレスリモコンとして利用する方法として利用する方法です。
スマートキーではキーを所有してドアノブなどにタッチすると車のドアが解錠するわけですが、この方法では以前の車と同様に、リモコンとなるキーの解錠ボタンを押すことで車を解錠するという方法です。施錠するときも同様にキーのリモコンで操作します。たぶん、これで一番、従来の操作方法に近くて面倒ではないのではないでしょうか?確かにドアに触れるだけで解錠できるのは便利と思いますが、リモコンで解錠するのも大した手間ではありませんし、それより盗難されるほうが怖いと思います。
最後に
このように簡単に車が盗難できてしまうリレーアタックですが、たぶんこの手法により、多くの車が盗難されるようなことになると思います。そして恐らくですが、メーカがユーザに注意喚起してスマートキーのシステムを利用しないような案内を出すようなことがやってくると思います。
ユーザとしては、それまでは自分で対策するしかありませんので、上記の方法を検討して盗難を防止する必要があると思います。
ユーザができることは、まずは車の機能でスマートキーのシステムを停止することです。若干不便になりますが、リモコンが使えるので大した不便ではありませんし、他の方法と比較すると利便性も損なわれませんのでオススメです。
メーカにお願いしたいのは、スマートキーのシステムに電波を送信するしないの簡単なスイッチを設定することですね。1)まったく電波を送信しない 2)スマートキーとしては利用せずリモコンで施錠/解錠する 3)スマートキーとしての機能も利用する というような3種類の設定ができれば、簡単に盗難を防止することができます。
いずれにせよ、こういうのは一度広まると爆発的に被害が広がっていきますから、せっかく購入した高額な車を盗まれないうちに対策をしておくことが望ましいと思います。
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